紫きぶ七橋の地図>>
 越前市の市街地を南北に流れる河濯川に架かる七つの橋に、「紫式部日記絵巻」や「源氏物語」の一場面をレリーフでとりつけてあります。 平安絵巻をたどり、古に思いを馳せてみませんか。

河濯橋
渡殿の紫式部の局の戸をたたく道長 寛弘六年(1009)
日記のあらすじ
 渡殿に寝たる夜、誰かが戸をたたく。が、物音ひとつたてずにやりすごしてしまった。

 夜訪問してきたのは、ほかならぬ藤原道長。
翌朝「夜通し水鶏(くいな)にもまして戸をたたいたが・・・・」と、和歌がとどく。紫式部の心の内が横顔で推察できる名場面。
寛弘六年(1009) 中宮(彰子)に新楽府を進講する紫式部
日記のあらすじ
 中宮(彰子)に人目を避けて漢詩文「白氏文集」の「新楽府」を折をみながらお教え申し上げる。

 蒔絵の文机をはさみ、巻子本「白氏文集」が広げられる。


城ケ堀橋
風の涼しい夕暮れ、琴を弾いて憂いをまぎらす 寛弘六年(1009)
日記のあらすじ
 風の涼しい夕暮れ、寡婦の侘びずまいを象徴するような琴の音に思いをはせる。
 女だてらに漢籍にも長じた自分に、女房たちが批判の言葉をかける。

 二階厨子に置かれる冊子や巻子本は、紫式部が学問に向けた情熱を象徴する。

寛弘六年(1008) 十二月二十九日夜 女房たちと語りながら歳末の夜を過ごす
日記のあらすじ
 師走二十九日、実家から宮中に参上。
 夜更けにもの寂しい感慨にふけり、わが身の行く末をしみじみ和歌に託す。

 閉じた雨戸、蔀戸(しとみど)の内側で燈台の明かりに照らされる紫式部。


鈴虫橋
寛弘五年(1008) 十一月一日夜 道長から賀の歌を求められる紫式部
日記のあらすじ
 極みを知らぬ一同の酩酊ぶりに宰相の君と几帳のかげに隠れるが、藤原道長に見つかる。

 祝宴の騒がしさを隔て、道長と紫式部の和歌を交わすひととき。

左から、紫式部、宰相の君、藤原道長


御五十日の祝いの宵、若宮に餅を供する道長 寛弘五年(1008) 十一月一日夜
日記のあらすじ
 少輔の乳母が禁色の着用をゆるされ、また殿(道長)の北の方が若宮(敦成親王)をお抱きに成る。

 若宮誕生の喜びが美しい寝殿内部に広がる。

左から、北の方、若宮、藤原道長、中宮(彰子)




岩永橋
寛弘五年(1008) 十一月一日夜 御五十日祝いに若宮を抱く中宮と
祝膳を供する女房
日記のあらすじ
 若宮(敦成親王)にご誕生五十日目のお祝い。女房たちが着飾り参内する。若宮をお抱きに成るご様子は絵に書いたような美しさである。

 吹屋屋台の手法による寝殿内部の模様。


左から大納言の君、若宮、中宮


渡殿にある紫式部の局に立ち寄る斉信と実成 寛弘五年(1008) 十月十七日
日記のあらすじ
 風情ただよう夜、藤原斉信と藤原実成が昇進のお礼を中宮(彰子)に啓上の途中、渡殿の東端の宮の内侍の部屋に声をかける。

 月冴えわたる夜更けに、高位の公卿二人の訪問を反発げに応じる紫式部。現在絵巻の精髄を示す画面構成。

左から、藤原斉信、紫式部、藤原実成、宮の内侍

千代鶴橋
新造の竜頭鷁首の舟を下見する道長
寛永五年(1009)
 十月十三日〜十月十六日朝
 行幸が近くなったある日、池に遊ぶ水鳥をながめ思いにしずむ。
 一条天皇が土御門邸(道長邸)への行幸当日の朝、新造の舟を道長がご覧になる。

皇子誕生の喜びに、行幸の名誉が加わり、舟を下見する道長。舟首には、龍と鷁(げき)(想像上の水鳥)が豪華に飾られる。

蛭子橋
柏木(二) 病に伏す柏木を見舞う夕霧
 女三宮と犯した罪の重さから病にかかった柏木を夕霧(光源氏の嫡子)が見舞う様子を描く。柏木は夕霧に女三宮とのことを仄めかし、自分が亡き後、妻の落葉宮のことを頼む。

 柏木は、身舎の中で烏帽子姿で枕に顔を当てて伏せ、夕霧は、冠直衣姿で身舎に体を入れ柏木を見舞う。


左から柏木、夕霧

柏木(一) 女三宮を見舞う朱雀院
 密かに柏木と通じ薫を出産した罪の意識から出家を望む女三宮を父の朱雀院(源氏の異母兄)が夜の闇にまぎれて六条邸に見舞いに訪れる。

 袖で顔を覆う女三宮に対して、法衣装の朱雀院は涙を拭い、源氏も同じく目頭を押さえる。女三宮の出家をめぐり、悲しみに包まれる三者の様子を描く。

左から、女三宮、光源氏、朱雀院



平成橋
御産養の夜、中宮(彰子)の前に対座し静かに御簾をあげる紫式部
寛弘五年(1008年)九月十七日夜
日記のあらすじ
 第七夜の産養。朝廷の主催であるため盛大な儀式が流れるようにつづく。中宮(彰子)は、やつれ気味のご様子ながら一段とお美しい。

中宮がふさふさとした髪を結い、前に対座する紫式部が御簾をあげる静かな所作。

左から、中宮、紫式部
御産養の盛儀を覗き見て感激する夜居の僧
寛弘五年(1008年)九月十五日夜

日記のあらすじ

産養の華やかさを、居合わせた宿直の僧に屏風をおしあけて見せる。

 本尊に背を向けた老僧と、女房たちとの交歓のなごやかさ。


左から宿直の僧、紫式部、女房たち
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